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 語り尽くした壮行会。飲み屋を出た私たちは、すぐに気づいた。
「何か、えらくもやがかかってますね」
「…いや、これ違うやろ」
 明るい街灯に照らされている夜道に、白いもやのようなものが漂っている。それは一定の方向から流れてきており、私たちが壮行会を開いていた飲み屋から東側の路地が、その原因と知れた。
「これ、間違いない。火事や。昔、友達の家が火事になった時と、同じ匂いがする」
誰からとも分からず、私たちは火元と思われる方向へ歩き出した。近づくに連れ、同じく野次馬根性で集まってきた人達が増え、そして
「これ、本当に火事ですよ。温かい空気が流れてきてます」
「あ、サイレンが聞こえ始めた」
熱気が風に乗ってくるほど近づいて、初めてその光景が見えた。

 繁華街の路地。大人2人が両腕を広げられないほどの狭い道を挟み、両側に飲み屋や並んでいる。その中の1つ、1階がスナックで2階が住居といった風情の建物が火を噴いていた。1階はシャッターが降りていたが、2階の窓ガラスは既に壊れており、そこから橙色とも黄色ともつかない炎が舌を激しく伸ばす。炎は窓枠を舐めつくし、外へ外へとうねる。
「電線を伝って火が燃え移ることもある」
「裏側の建物に炎が映っとおやん。あっちも危ないな」
 そんな周囲の声を冷静に拾いながら、私の胸の内に何とも表現のしようがないものが溢れてきた。

 ぱんっ! ぱんっ!

 何かの炸裂音が立て続けに聞こえた時、それは言葉となって口からこぼれ出た。
「怖い」
「もう離れましょう。本当に怖い」
上司と同僚をせかし、私は消防車が到着した路地から出ていった。
 少し離れた所で火事の様子をうかがっていたが、私の両手は胸の位置で握り合わされたまま、解かれることはなかった。それが微かにふるえていたことも自覚していた。
 本能的な恐怖というものを、数年ぶりに私は味わっていた…。

=====
 3月26日22時過ぎ、佐賀の繁華街で火事がありました。偶然にも近くで飲み会をしていたので、生まれて初めて火事場というものを見てしまった次第です。…あれは怖い。炎が燃える様は確かに美しいけれど、そんな理性とは別の所で、生き物としての根っこが怖さで震えました。怖かったなあ。けが人が出ていなければ良いのですが。
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